様々な検出器の種類と特徴についてまとめます。
どれに何を使えば良いでしょう?
関連の問題を以下に示します。
分析に関する概論
令和2,3年,平成31年2月問17, 令和2,元年8月問17
特定化学物質
令和2年8月問6, 令和元年8月問8
有機溶剤
令和2年8月問9
・電子捕獲検出器(ECD Electron Capture Detector)
①63Niからのβ線により流してある窒素ガスがイオン化され電子が放出される状態(電子がいっぱい)
②電気陰性度の高いハロゲン化合物等が試料として流れると電子を捕獲するので電子が減少し、ピークとなり検出
電気陰性度の高い、電子親和力の強いものが検出可能→ハロゲン(フッ素F、塩素Cl、臭素Br、ヨウ素I、等)、ニトロ化合物
・水素炎イオン化検出器(FID Flame Ionization Detector)
水素炎によって試料中の炭素を酸化、イオン化してイオンを静電捕集して検出する
炭素さえあれば分析可能
炭素に水素以外が結合していると感度低下
・炎光光度検出器(FPD Flame Photometric Detector)
硫黄(S)、リン(P)、スズ(Sn)の化合物が分析可能
水素炎の中で発光する元素特有の光を干渉フィルターに透過させて検出
干渉フィルターにより特定の波長のみの検出、選択的で定性的にも用いられる
・光イオン化検出器(PID Photo-Ionization Detector)
試料に紫外線を照射してイオン化してイオン電流を検出
芳香族炭化水素の検出が可能(キシレン、トルエン、ベンゼン等)
下の図のように、紫外線ランプのエネルギー以下のイオン化エネルギーを持つ物質はイオン化されるので各ランプにより測定可能な物質は変わりますが作業環境測定では9.8eVのランプで芳香族炭化水素の検出が多いのではと思われます。
・熱伝導度検出器(TCD Thermal Conductivity Detector)
キャリアガス(リファレンス)とサンプルを含むキャリアガスの熱伝導度の違いを測定する
フィラメントに直流電圧をかけて熱し、ガスが通った時の温度変化、抵抗値の変化として検出する
無機ガスの分析も可能
・質量分析器(MS Mass Spectrometry)
試料をイオン化して電場または磁場により質量の違いで分離して検出するもの(下図参照)
イオン化されにくい化合物の分析には適さない
下図のようにイオン化の仕方によりスペクトルが異なるから分子構造の情報を得られる
・アルカリ熱イオン化検出器
(FTD Flame Thermionic Detector)
= 窒素リン検出器(NPD Nitrogen Phosphorus Detector)
①アルカリ金属であるルビジウムが水素炎で加熱されると表面にルビジウムラジカルが発生
②窒素やリン化合物がラジカルと反応してイオン化し捕集され電流変化を検知
窒素(N)、リン(P)化合物のみ検出可能、定性的な性能もある
リン化合物はFPDの方が選択性が高いのでほぼ窒素のみに利用
以上、参考になれば幸いです。