令和3年2月 問15の選択肢5
「分析線の波長が紫外部の場合, 分析線の光源には重水素ランプが用いられる.」
とありますがこれは誤りです。
簡潔に言えば、重水素ランプは紫外領域の発光だが、
線幅が広すぎ
→より線幅が狭い中空陰極ランプを使うということです。
紫外・可視吸光光度法においては以下のように光源ランプが使われます。
紫外領域:重水素ランプ
可視~近赤外領域:
タングステンランプ
= ハロゲン※1ランプ
=タングステン・ハロゲンランプ(化学式WX, Xはハロゲンを表す)※2
その他キセノンランプやキセノンフラッシュランプというものもありますが詳細は参考サイト※2にあるので興味のある方は調べて下さい。
しかし、原子吸光分析法では
「原子吸収スペクトルのスペクトル幅が非常に狭い(通常 0.01nm程度)ため,一般的な分光光度計の光源(スペクトル幅 1~2nm )を用いたのでは,原子の吸収度を測定できない。このため,スペクトル幅 0.001nm 程度の狭い光(輝線)が得られる中空陰極ランプが用いられる。」※3
以上の通り重水素ランプではなく中空陰極ランプを使うということです。
ここで中空陰極ランプとは?についてまとめておきます。
まず中空陰極ランプとはホロ(ホロー)カソードランプ(hollow cathode lump)とも呼ばれています。
ガラス管の内部に希ガスが充填されていて、内部の中空状の陰極には金属元素が使用されていて、陽極との間に電圧をかけると
→希ガスイオン生成→陰極の金属に衝突→金属原子が遊離
→金属原子がさらに希ガスイオンと衝突して励起
→励起金属原子が基底状態に戻る際に固有の発光
という流れで発光するランプです。
令和元年8月 問15の選択肢5では、
「中空陰極ランプの陰極は, 分析する金属又はその金属を含んだ合金でつくられる.」とあり、これは正しいです。
つまり、中空陰極ランプは測定したい金属元素に応じて同じ金属元素のものを使用するということです。
こうすることで、中空陰極ランプからは測定対象の金属元素が励起状態から基底状態に戻る時の共鳴線が放出されることになり、原子吸光では同じ金属原子が基底状態から励起状態になり放出された光を吸収することで測定が成り立っています。
ただし、バックグラウンドの補正には重水素ランプを使用しますのでこの点は注意して覚えましょう。
以上、参考になれば幸いです。
※1参考
紫外可視分光光度計の基礎(4) 紫外可視分光光度計、ハードウェアの特徴と役割 | 日本分光株式会社 (jasco.co.jp)
※2参考
紫外可視分光光度計の基礎 | アジレント・テクノロジー株式会社 (chem-agilent.com)
※3
生活と無機化学(原子吸光法)|技術情報館「SEKIGIN」|物質の元素分析法の一つである原子吸光分析の原理,種類,装置の構成,光源の種類,スペクトルの補正法 などを紹介より引用